「家で薬膳」というと、ハードルが高い雰囲気があったりする、という方が多いかもしれませんが、実は簡単にできるものです。
中医学の考え方では、本来、薬膳というのは普段の食事で健康になろうというものなんです。
病気になってから薬で治そう、ではなくて、普段から食事に気をつけて、身体を健康にして、病気にならないような体を作るっていうのが目的なんですね。
ですので、そういったところから薬膳の考え方が生まれたとわかれば、普段の食事が、なんでも薬膳料理になり得る、と柔らかく考えることができます。
朝鮮人参を使わないといけないとか、苦い木の実や植物の根っこなどを入れないといけないとか、難しく考えがちですが、そうじゃない。
生姜やネギを使って身体を温めたり、夏はスイカで体を冷やしたり、ニガウリを食べて熱を冷ましたり。身の回りに普通にあるもので、充分なんです。
旬のものじゃない食材だって、薬膳料理にすることは簡単です。
例えば、お豆腐って、一年中食べられるものですよね。ただ、お豆腐は体を冷やすものなので、季節によって食べ方を工夫すると、たちまち薬膳料理になります。
冬に冷奴は、あまり食べない方がいいですし、湯豆腐にして、少し生姜を加えて。春は気を巡らせるために、紫蘇なんかを加えたり、夏は冷奴。
そういう季節や体調に合わせた一工夫をして、様々なバランスを考え、それに合ったものを調理すると、薬膳料理になるということなんです。
季節の野菜だけでも、充分薬膳料理になります。
季節の野菜って、やっぱりその時期、その地域に生きているものが摂るべきものなんですよね。トマトや胡瓜等の夏野菜は体を冷やすものが多いですし、南瓜などの冬野菜は体を温めるもの。それらを上手く取り入れるだけでも、薬膳料理になります。
ただ、とはいえ、夏だからと言って夏野菜ばかり食べると、体が冷えてしまいますので、そこにほんの少しだけ、体を温める食材を入れてバランスをとることが大切です。
バランスをとるって、どういうこと?
湿気を身体に溜めやすい人(Aさん)と、湿気を身体から排出しやすく、乾燥しやすい人(Bさん)を、例としてお話してみます。
日本は湿気が多い国です。
特に、夏の湿度は高いため、そんな時には、水分を体から取り除きながら、体の熱も取らないといけないという事になりますね。
ただ、この湿気ですが、体に溜まりやすいAさんの場合、むくみやすいということにもなりますし、Aさん自身は冬でも湿気を溜めやすいので、乾燥しがちな冬でも、湿気を体から取り除くようにしておいた方がいい、ということを、Aさんは知っておいた方がよいでしょう。
一方で、乾燥しやすいBさんは、湿度の高い夏でも、乾燥しやすいのです。
だから、あまり湿気を取り除くものを摂りすぎると、より一層乾燥してしまう、ということになるので、夏であっても、そういったものをはあまり摂らない方がいいでしょう。
例えば、この2人にスイカを勧める時。
夏ならではの果物で、非常に水分が多い果物なので、湿気が溜まりがちな
Aさんよりは、乾燥しがちなBさんに、どんどん食べてください、って勧めちゃう、という感じですね。
更に言うなら、食べ過ぎると体が冷えすぎてしまうので、常温で食べたらいいよ、とか。
長くなりましたが、つまりは、全て、その人の体質や体調に合わせて、考えて食べることが、薬膳になりうる、ということなのです。
お肉も野菜も全部。その組み合わせや食べ方、それぞれ効能が異なり、人によっても異なる作用を持つんですね。
古くから根付く、薬膳の基本的な考え方
日本には、昔から四季があり、季節ごとの慣習やイベントがあったりして、食材も豊富です。ですので、日本人には、薬膳の心得みたいなものが、もともと生活の中に息づいていて、なんとなく意識の中にそれが存在しています。
例えば、ひな祭りでは、蛤のお吸い物やちらし寿司を戴きますね。蛤のお吸い物やちらし寿司に含まれている栄養素の中には、春に滞りがちな気を巡らせるものが多く含まれているんです。
夏にある、土用の丑の日も、鰻が血液をサラサラにするという役割があります。
その意味を、きちんとわかっていなくても、既に生活に入り込んでいて、何となく旬のもの、身体にいいものを食べよう、みたいな感覚がある。
まずはそこからでいいと思うんです。
ちょっとしたことだけでも薬膳になると思えば、気負わずにやってみよう、という気持ちになりますよね。
簡単に自宅でもできる薬膳料理を、これから、いくつかご紹介していきたいと思います。
See you soon!